ぶんだんはどうなる
文壇はどうなる

冒頭文

一 大正五年頃、つまり私が最初に小説を発表した時代——ちょうど、久米正雄君や菊池君や芥川さんが『新思潮』からだんだん乗り出して行った時代で、文壇というものがまだハッキリ形を持っていた。それで自分のような生活力は旺盛だが並な気持で生きている人間には、その時代の文壇というものが、恐かった。大へん特別で、口を一つきくのでも智慧を廻して云うようだし、盛に神経の磨きっこをするし、外からゴシップを読んだ

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1931(昭和6)年5月17、18日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日