大貧に、大正義、望むべからず ——フランソワ・ヴィヨン 第一回 一つの作品を、ひどく恥ずかしく思いながらも、この世の中に生きてゆく義務として、雑誌社に送ってしまった後の、作家の苦悶に就(つ)いては、聡明な諸君にも、あまり、おわかりになっていない筈(はず)である。その原稿在中の重い封筒を、うむと決意して、投函する。ポストの底に、ことり、と幽(かす)かな音がする。そ