さっかへのかだい 「とらわれただいち」について
作家への課題 「囚われた大地」について

冒頭文

偶然のことから、私は「囚われた大地」がまだ発表されず、あるいはその原稿も小部分しか書かれていなかったと思われる時分、平田小六氏と知り合う機会を得た。そのころ平田さんは、日本にはまだ農民の生活を如実に書いた文学がすくないということに注意を向け、日本のような経済的社会的事情を持つ国にとって、実は農民の生活を文学に書くということが非常に大切ではないか。一つ自分は、これまでプロレタリア作家が好んでとり上げ

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国大学新聞」1934(昭和9)年10月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日