こてんふう
古典風

冒頭文

——こんな小説も、私は読みたい。(作者)        A 美濃(みの)十郎は、伯爵(はくしゃく)美濃英樹の嗣子(しし)である。二十八歳である。 一夜、美濃が酔いしれて帰宅したところ、家の中は、ざわめいている。さして気にもとめずに、廊下を歩いていって、母の居間のまえにさしかかった時、どなた、と中から声がした。母の声である。僕です、と明確に答えて、居間の障子(しょうじ)をあけた

文字遣い

新字新仮名

初出

「知性」1940(昭和15)年6月

底本

  • 太宰治全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年10月25日