せいかつのみちより
生活の道より

冒頭文

今年の一月から半年ばかりの間、私は大変非人間的条件の下で生活することを余儀なくされた。 今になって見ると、その不自由な生活の終りに近くなってからのことであるが、私は心臓が弱って氷嚢を胸に当てていないと、肺動脈の鬱血で咳が出て苦しい状態にあった。 そういう或る日、塵くさい木造建物の二階の窓際で髪を梳かし、少しさっぱりした心持になって不図わきを見ると、二三冊の本と一緒に「ローザの手

文字遣い

新字新仮名

初出

「知識」1934(昭和9)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日