わたしのあったゴーリキイ
私の会ったゴーリキイ

冒頭文

私がマクシム・ゴーリキイに会ったのは、ちょうど今から足かけ八年前の一九二八年の初夏のことであった。 知られているとおりにゴーリキイは一九二三年にその頃まだ生きていたレーニンのすすめによって、持病の肺病の療養のためにイタリーへ行ってそこで暮らしていた。 五年ぶりでゴーリキイがソヴェトへ帰ってくる。このことはソヴェト同盟の大衆にとって一つの大きい興味と感動の中心であった。五年の間に

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学案内」1936(昭和11)年8月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日