マクシム・ゴーリキイによってえがかれたふじん
マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人

冒頭文

人間と人間との遭遇の中には、それを時間的に考えて見るとごく短い間の出来事であり、その間にとり交された言葉や眼ざしなどが僅かなものであっても、ある人の生涯にとって非常に意味の深い結果や教訓をもたらすことがある。私が、マクシム・ゴーリキイに一度会ったということは、その当時には却って理解していなかった彼の芸術的生涯を理解するための生々とした鍵となっていることが、ゴーリキイの亡くなった今日はっきり感じられ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文学評論」1936(昭和11)年8月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年12月20日