おうがい・そうせき・とうそんなど 「ちちうえさま」をめぐって |
鴎外・漱石・藤村など 「父上様」をめぐって |
冒頭文
つい先頃、或る友人があることの記念として私に小堀杏奴さんの「晩年の父」とほかにもう一冊の本をくれた。「晩年の父」はその夜のうちに読み終った。晩年の鴎外が馬にのって、白山への通りを行く朝、私は女学生で、彼の顔にふくまれている一種の美をつよく感じながら、愛情と羞らいのまじった心でもって、鴎外の方は馬上にあるからというばかりでなく、自分を低く小さい者に感じながら少し道をよけたものであった。観潮楼から斜か
文字遣い
新字新仮名
初出
「読売新聞」1936(昭和9)年10月11、14、15日号
底本
- 宮本百合子全集 第十巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年12月20日