わかいふじんのちょしょふたつ
若い婦人の著書二つ

冒頭文

いま、私の机の上に二冊の本がのっている。一冊は大迫倫子さんの『娘時代』、もう一冊は野沢富美子さんの『煉瓦女工』。この二冊の本は、それぞれ近頃ひろく読まれている本だと思う。だが、同じ娘としての生活をかいていながらこれらの本は、何と大きいちがいをもっていることだろう。若い女のひとによって書かれた二つの本をよむ人々は、ここにある生活の世界のちがいに対してどんな感想を抱いただろうか。『娘時代』はそれとして

文字遣い

新字新仮名

初出

「新女苑」1940(昭和15)年7月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日