ぶんがくとちほうせい
文学と地方性

冒頭文

この間或る必要から大変おくればせに石坂洋次郎氏の「若い人」上下を通読した。この作品が二三年前非常にひろく読まれたということも、今日石川達三氏の「結婚の生態」がひろく読まれているということと対比してみれば、同じような現象のうちに全く異う要素をもっていることで興味ふかく感じた。「若い人」が一般に読まれた要素の一つには、「結婚の生態」が今日よまれている要素と同じ種類のものもある。ごくつづめた言葉でそれを

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸」1940(昭和15)年7月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日