きょうげんのかみ
狂言の神

冒頭文

なんじら断食するとき、かの偽善者のごとく悲しき面容(おももち)をすな。 (マタイ六章十六。) 今は亡(な)き、畏友(いゆう)、笠井一について書きしるす。 笠井一(かさいはじめ)。戸籍名、手沼謙蔵。明治四十二年六月十九日、青森県北津軽郡金木町に生れた。亡父は貴族院議員、手沼源右衛門。母は高(たか)。謙蔵は、その六男たり。同町小学校を経て、大正十二年青森県立青森中学校に入

文字遣い

新字新仮名

初出

「東陽」1936(昭和11)年10月

底本

  • 太宰治全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年8月30日