ほんやくのかち 「ゴロヴリョフけのひとびと」にふれて |
翻訳の価値 「ゴロヴリョフ家の人々」にふれて |
冒頭文
日本の知識人の読書表には、実に翻訳がどっさり入りこんでいると思う。文学書にしても、日本ぐらい月々幾冊もの訳書が出版されているところは余り無かろうと思う。アメリカなどは、どっちかと云えば翻訳書が比較的どっさり出る方だろう。新しくて若いアメリカの文化はヨーロッパの文化の富から吸収するべきものを少からずもっているわけだし、ああいう社会生活の習俗では、イギリスの読書人たちのようにフランス語やドイツ語の知識
文字遣い
新字新仮名
初出
「九州帝国大学新聞」1940(昭和15)年11月27日号
底本
- 宮本百合子全集 第十二巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年4月20日