とおいねがい
遠い願い

冒頭文

一人の作家の生涯を、そのひとの一生が終ったあとで回顧するときには、誰しもその作家の生きた時代や、その時代にかかわりあって行ったその人らしい生きかたの姿を、比較的はっきりつかみ出して、観察することも批評することも出来る。 しかし、作家たちめいめいが生きて仕事をしている真最中で、しかも時代はおそろしく迅速に展開しているようなとき、その相互的な関係の中で行われる作家個人の成長と時代の歴史的な消

文字遣い

新字新仮名

初出

「知性」1940(昭和15)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日