こんにちのぶんがくのしょそう
今日の文学の諸相

冒頭文

一 年の瀬という表現を十二月という歳末の感情に結びつけて感じると、今年は年の瀬を越すなどというものではなく、年の瀬が恐ろしくひろい幅とひどい勢いでどうどうと生活もろとも轟き流れている気がする。一年の終りの月というしめくくりの気分なんかどこにもない。いろいろな事象がそれ自身の収拾つかない課題の生々しい断面をむき出しながら、益々幅と量とをましながら奔流しつつ十二月が来ている。 日々の生

文字遣い

新字新仮名

初出

「都新聞」1940(昭和15)年11月28日~12月2日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十二巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年4月20日