『ちょうじょ』について |
『長女』について |
冒頭文
野沢富美子の作品集『長女』に収められている「長女」「陽のない屋根」「過失」などは、いずれも現代日本の庶民の生活の偽らず飾らない記録として読者に迫って来る一種の力を持っている。綺麗ごとで生活の上皮を塗って暮している人々にとって、ここに描かれている生活はそういう生活が現実に在るということで一つの権利を示しているようでもある。 「凝視」という作品を私は様々の感想を動かされながら読んだ。体が悪くて働
文字遣い
新字新仮名
初出
「朝日新聞」1941(昭和16)年1月15日号
底本
- 宮本百合子全集 第十二巻
- 新日本出版社
- 1980(昭和55)年4月20日