にほんじょうこのじょうたい
日本上古の状態

冒頭文

從來日本史の研究は、何れの時代を問はず、本國の側から觀察するが常であつた。たまに松下見林の異稱日本傳の如く、他國の側からこれを見たものもあるけれども、これは極く稀な例であつて、殊に徳川の中世以後、國學が發達してから、其の研究法が當時の漢學者に比して寧ろ進歩して居り、學術的に近い爲に、その日本中心主義の研究法をます〳〵一般に是認せしむる傾向を強めた。それで藤貞幹などの如く多少考古學の樣な見地から、古

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「歴史と地理」1919(大正8)年2月

底本

  • 内藤湖南全集 第九巻
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年4月10日