ごくちゅうせいかつ
獄中生活

冒頭文

一 監獄は今が入り時 寒川鼠骨君には「新囚人」の著がある。田岡嶺雲君には「下獄記」の著がある。文筆の人が監獄に入れば、必ずやおみやげとして一篇の文章を書く例である。予もまた何か書かずにいられぬ。 監獄は今が入り時という四月の二十一日午後一時、予は諸同人に送られて東京控訴院検事局に出頭した。一人の書記は予を導いてかの大建築の最下層に至った。薄暗い細い廊下の入口で見送りの諸君に別れ

文字遣い

新字新仮名

初出

「楽天囚人」1911(明治44)年3月

底本

  • 日本プロレタリア文学大系(序)
  • 三一書房
  • 1955(昭和30)年3月31日