トコヨゴヨミ |
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冒頭文
一 雑嚢を肩からかけた勇吉は、日の暮れる時分漸く自分の村近く帰って来た。村と言っても、其処に一軒此処に一軒という風にぽつぽつ家があるばかりで、内地のようにかたまって聚落を成してはいなかった。それに、家屋も掘立小屋見たいなものが多かった。それは其処等にある木を伐り倒して、ぞんざいに板に引いて、丸太を柱にして、無造作に組合せたようなものばかりであった。勇吉も矢張りそういう家屋に住んでいた。
文字遣い
新字新仮名
初出
「早稲田文学」1914(大正3)年3月
底本
- 日本プロレタリア文学大系 序
- 三一書房
- 1955(昭和30)年3月31日