しんにほんぶんがくのたんしょ |
新日本文学の端緒 |
冒頭文
満州事変以来今日までの十四年間に、旧日本の文学が崩壊しつくして行った過程は、日本文学史にとって未曾有のことであるばかりでなく、世界文学の眺望においても、駭(おどろ)くべき一事実ではないだろうか。 戦時下、西欧の多くの国々が文化の混乱と貧困とに陥った。けれども、それは日本におけるように文学精神そのものの喪失ではなかったと思う。更に心をうたれるのは、日本文学のこの惨憺たる事実が、文学者自身の
文字遣い
新字新仮名
初出
「毎日新聞」1945(昭和20)年10月29日号
底本
- 宮本百合子全集 第十三巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年11月20日