さくひんとせいかつのこと |
作品と生活のこと |
冒頭文
あるところで、トーマス・マンの研究をしている人にあった。そのとき、マンの作品の或るものは、実に観念的で、わかりにくくて始末がわるいものだけれども、一貫して、マンの作家としての態度に感服しているところがある。それは、トーマス・マンはマンなりに、自分の問題を自分のそとにとり出して作品としての客観的存在を与え、それを真剣に追究して行って、作品の世界で到達した点まで自分の生活を押し出し、そこから次の生活を
文字遣い
新字新仮名
初出
「新日本文学」第8号、1947(昭和22)年7月
底本
- 宮本百合子全集 第十三巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年11月20日