デスデモーナのハンカチーフ
デスデモーナのハンカチーフ

冒頭文

ルネッサンスという時代が、理性の目ざめのときであるけれども、その半面にはまだどんなに智慧のくらさを曳いていたかということはオセロにもつよくあらわれている。オセロの悲劇は美しくやさしいオセロの妻デスデモーナが、女として一枚のハンカチーフをどう扱ったかというところにかかっている。 エミール・ヤニングスが映画のオセロに扮したとき、彼はそのもち味で、黒人の英雄であるオセロの直情径行の素朴な人間性

文字遣い

新字新仮名

初出

「女靴の跡」高島屋出版部、1948(昭和23)年2月

底本

  • 宮本百合子全集 第十三巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年11月20日