“なぐさみのぶんがく”
“慰みの文学”

冒頭文

菊池寛の文学が大衆文学として広く愛されたというならば、その理由は菊池寛の文学と生活の基本的な調子、もっとも日本の半封建的な社会生活におかれている生活の常識に固く立っていたからだと思う。 例えば「忠直卿行状記」などをみると大名の君主とその家来との間にあった極端な形式主義を足場にしたのに対して割合に人間らしい常識を持っていた忠直卿がジリジリしてその腹立ちを当時の君主らしい乱暴狼藉に現わした。

文字遣い

新字新仮名

初出

「青年新聞」1948(昭和23)年3月17日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十三巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年11月20日