きずだらけのあし ふたたびじゅんけつについて
傷だらけの足 ふたたび純潔について

冒頭文

こんにち、わたしたちがふたたび純潔ということについて語るとすれば、それは、どんな新しい人間精神の欲求からのことだろう。 わたしたちの生活の下で、ある種の言葉は、この半世紀の間に、全く水火をくぐって、傷だらけにされて来た。たとえば愛という言葉。正義という言葉。そして純潔という言葉もその仲間にはいる。 ヨーロッパの社会では第一次大戦のころ(一九一四—一八)から純潔に対する観念はすべ

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1950(昭和25)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十三巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年11月20日