「したじき」のもんだい こんにちのぶんがくへのうたがい
「下じき」の問題 こんにちの文学への疑い

冒頭文

いたるところで、現代文学の停滞が意識され、語られている。 この問題が「小説の運命」という風な題目によってとりあげられはじめたのは、きのう、きょうのことではなかった。二三年前からのことでもない。さかのぼれば、一九一七、八年という時代に問題の源が発している。第一次大戦の末期からその後にかけて市民(ブルジョア)の文学としての近代文学のうみてである中間層の社会生活は、激動をうけた。その市民として

文字遣い

新字新仮名

初出

「人間」1951(昭和26)年1月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十三巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年11月20日