おしゃれどうじ
おしゃれ童子

冒頭文

子供のころから、お洒落(しゃれ)のようでありました。小学校、毎年三月の修業式のときには必ず右総代として校長から賞品をいただくのであるが、その賞品を壇上の校長から手渡してもらおうと、壇の下から両手を差し出す。厳粛な瞬間である。その際、この子は何よりも、自分の差し出す両腕の恰好(かっこう)に、おのれの注意力の全部を集めているのです。絣(かすり)の着物の下に純白のフランネルのシャツを着ているのですが、そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1939(昭和14)年11月

底本

  • 太宰治全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年10月25日