ひしがれたじょせいとかたる ちかごろおもったこと
ひしがれた女性と語る 近頃思った事

冒頭文

最近、計らずも身辺近く見た或る婦人の境遇が、自分に種々の事を考えさせました。 その婦人と云うのは、もう四十歳を幾つか越した年配でした。けれども、少女時代から、決して幸福な生活のみを経験して来たんではありません。 僅か十四五の時、両親には前後して死去され、漸々(ようよう)結婚が未来の希望を輝せ始めると、思いもかけず長年の婚約者との間に、家族的な障碍が横(よこた)えられました。

文字遣い

新字新仮名

初出

「女性同盟」新婦人協会、1921(大正10)年8月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日