ふたつのかた
二つの型

冒頭文

服装に就いての趣味と云っても、私は着物の通人ではないから、あれがいいとか、こんな色合は悪いとかは云えない。要するに着ているそのひとに合っていればいい。種々変った型、色、等があって差し支えないということは、恰も同一の個性が人間の中に見出されないのと同じわけではないか。唯、この際、自分にあてはまったものが、そう簡単に易々と見附かるかどうかと云うことは云える。そのために衣裳好みということが起るのであるな

文字遣い

新字新仮名

初出

「エレガント」1927(昭和2)年11月特輯号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日