わたしもひとりのおんなとして
私も一人の女として

冒頭文

今私たちの前には、その事件が当事者の愛の純情に発しているという意味で人の心を打った二つの現象が示されている訳ですが、私は松本伝平氏の場合と弓子さんの場合とは、それぞれ別のもので、違った分析がされなければならないものではなかろうかと考えます。 松本氏が、急になくなられた許婚の愛人栄子さんと岳父の代人で結婚の盃をあげられた行為は、氏の年齢や学歴やその地方での素封家であるというような条件と対照

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1934(昭和9)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日