フォスフォレッスセンス
フォスフォレッスセンス

冒頭文

「まあ、綺麗(きれい)。お前、そのまま王子様のところへでもお嫁に行けるよ。」 「あら、お母さん、それは夢よ。」 この二人の会話に於いて、一体どちらが夢想家で、どちらが現実家なのであろうか。 母は、言葉の上ではまるで夢想家のようなあんばいだし、娘はその夢想を破るような所謂(いわゆる)現実家みたいなことを言っている。 しかし、母は実際のところは、その夢の可能性をみじんも信じ

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本小説」1947(昭和22)年6月

底本

  • 太宰治全集9
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年5月30日