フェア・プレイのひき
フェア・プレイの悲喜

冒頭文

私の不幸というものについて書くように云われると、何となし当惑したような咄嗟(とっさ)の心持になるのは、私ひとりのことだろうか。世間で、不幸という言葉に対して幸福という形容で云われている、そういう生活が決して私の毎日にあるわけではないのだが。それどころか、こうあったらと思う生活とは随分ちがった暮しだと思う。たとえば、誰にしろ、愛している者とは一緒に暮したい。同じ貧乏もするならば二人でしたい、どんな妻

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1939(昭和14)年7月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日