ぎょそんのふじんのせいかつ
漁村の婦人の生活

冒頭文

随分昔のことであるけれども、房州の白浜へ行って海女のひとたちが海へ潜って働くのや天草とりに働く姿を見たことがあった。 あの辺の海は濤がきつく高くうちよせて巖にぶつかってとび散る飛沫を身に浴びながら歌をうたうと、その声は濤の轟きに消されて自分の耳にさえよくきこえない。雄大な外洋に向って野島ケ崎の燈台が高く立っている下の浜辺にところどころ燃(た)き火をして、あがって来た海女のひとたちのひとむ

文字遣い

新字新仮名

初出

「漁村」1941(昭和16)年1月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日