しゅふいしきのてんかん
主婦意識の転換

冒頭文

義弟が、生れたばかりの赤坊と若い妻と母とをおいて再び出征するので、二十日ばかり瀬戸内海に沿った村へかえっていた。そこは、海辺近くだから春はめばる、夏は鱸(すずき)と魚にこと欠いた経験はなくて何十年来暮していたところ、今度行ってみると、母は魚買いに苦心している。自転車のうしろに魚籠(びく)をつけて門口から声をかけて通る魚売りは三日に一度も来なくて、往来にその自転車をちらりと見かけ走って出て声をかける

文字遣い

新字新仮名

初出

「女性生活」1941(昭和16)年10月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日