アワァビット
アワァビット

冒頭文

我々の、未だ完全に世界化されない生活感情では、兎角(とかく)外国で起った事は、まるで異った遊星に生じた現象ででもあるかのような、間接さを以て、一般に迎えられる。理論は、既に、或る程度まで宇宙的になっているだろう。然し、真実、一人一人の日常の心が、何処まで汎人類的に活動しているか、時に疑わしく思う。地球上に在るおのおのの集団——国——が、現在どんな有機的関係を持っているか、又、どう云う運命の下に、日

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1922(大正11)年7月23日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日