ろまんどうろう
ろまん灯籠

冒頭文

その一 八年まえに亡(な)くなった、あの有名な洋画の大家、入江新之助氏の遺家族は皆すこし変っているようである。いや、変調子というのではなく、案外そのような暮しかたのほうが正しいので、かえって私ども一般の家庭のほうこそ変調子になっているのかも知れないが、とにかく、入江の家の空気は、普通の家のそれとは少し違っているようである。この家庭の空気から暗示を得て、私は、よほど前に一つの短篇小説を創ってみ

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月

底本

  • 太宰治全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年12月1日