ていてんをみてのかんそう
帝展を観ての感想

冒頭文

数年の間、私はいろいろのことから帝展というものを観ないで過して来た。今年久しぶりにほんの通りすぎる程度ではあったがそれぞれ数百点の日本画、洋画を見物し、素人らしい感想にみたされた。 私が記憶していた頃の帝展では、日本画というと大作ぞろいで、一室の壁半分を一枚で占めるような大きい画が多かった。秀作も駄作も大きさで先ず観衆を瞠目せしめる風であった。今年は、それがいずれも余り大きい作品がなくな

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人文芸」1934(昭和9)年12月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日