ロマネスク |
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冒頭文
仙術太郎 むかし津軽の国、神梛木(かなぎ)村に鍬形惣助(くわがたそうすけ)という庄屋がいた。四十九歳で、はじめて一子を得た。男の子であった。太郎と名づけた。生れるとすぐ大きいあくびをした。惣助はそのあくびの大きすぎるのを気に病み、祝辞を述べにやって来る親戚(しんせき)の者たちへ肩身のせまい思いをした。惣助の懸念(けねん)はそろそろと的中しはじめた。太郎は母者人(ははじゃひと)の乳房にもみずか
文字遣い
新字新仮名
初出
「青い花」1934(昭和9)年11月
底本
- 太宰治全集1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1988(昭和63)年8月30日