「ラジオおうごんじだい」のていちょう |
「ラジオ黄金時代」の底潮 |
冒頭文
現代ヨーロッパ文学には、ラジオや飛行機が様々の形でとりいれられ、スピードや空間の征服やそれによる人間の心理の複雑化などが語られている。 日本でもラジオは文学に反映しているが、最近東朝が紙面の品位を害するという理由で掲載を打ちきったとつたえられる永井荷風氏の「濹東綺譚」は、恐らく今日の世界の文学に類のないラジオと一人の人間との関係を発端としていると思う。作者永井荷風は、夏の夕方になると軒並
文字遣い
新字新仮名
初出
「唯物論研究」1937(昭和12)年8月号
底本
- 宮本百合子全集 第十四巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年7月20日