わたしたちのしゃかいせいぶつがく |
私たちの社会生物学 |
冒頭文
毎朝きまった時間に目を醒す。同じ部屋で、同じ蒲団のなかで。それから手早く身じまいをして、勤めに出てからはずっと緊張した仕事から仕事への一日が過ぎる。夕方になるときまった時間に、下駄箱のところで上草履を下草履にはきかえて、電車通りへ出て来る。そういう時、ああ、きょうも済んだという安心と一緒に、又あしたも今日とおんなじ日が来るのかという何か物懶(ものう)い感情が湧くことがある。毎日、毎日。そして一年、
文字遣い
新字新仮名
初出
「新女苑」1937(昭和12)年8月号
底本
- 宮本百合子全集 第十四巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年7月20日