こううんのてがみのよりどころ
幸運の手紙のよりどころ

冒頭文

幸運の手紙というものは、私自身としては送られたことがない。もし送られたら、多分そのまますててしまうだろうと思うけれども、立ちどころに厄災来る、というようなことが書かれていたら、やっぱりいい心持はしないであろう。あら、いやね、こんなものが来た、というだろうと思う。 幸運の手紙というのは、絶えず地球をまわっていて、時々日本へもめぐって来るというものなのだろうか。それとも日本の内は日本の内だけ

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本学芸新聞」1939(昭和14)年8月20日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十四巻
  • 新日本出版社
  • 1979(昭和54)年7月20日