むかしをいまに なすよしもなきばれいしょとわた |
昔を今に なすよしもなき馬鈴薯と綿 |
冒頭文
三四日、風邪で臥ていた従妹が、きょうは起きて、赤い格子のエプロンをかけ、うれしそうにパンジーの鉢植をしている。 その縁側の外に立って、私はシャベルで縁の下の土を掬っては素焼の鉢にうつした。この従妹は田舎の家で土いじりの好きな父親の対手をしていたものだから、いろいろのことに自然通じていて、そうやって鉢へ入れる土も、縁の下のでなければだめ庭土はすっかり凍っているからと、私に教えるのであった。
文字遣い
新字新仮名
初出
「日本学芸新聞」1940(昭和15)年3月20日号
底本
- 宮本百合子全集 第十四巻
- 新日本出版社
- 1979(昭和54)年7月20日