だいぼさつとうげ 04 みわのかみすぎのまき |
大菩薩峠 04 三輪の神杉の巻 |
冒頭文
一 大和(やまと)の国、三輪(みわ)の町の大鳥居の向って右の方の、日の光を嫌(きら)って蔭をのみ選(よ)って歩いた一人の女が、それから一町ほど行って「薬屋」という看板をかけた大きな宿屋の路地口(ろじぐち)を、物に追われたように駈けこんで姿をかくします。 よくはわからなかったが、年はたしか二十三から七までの間、あまり目立たないつくりで、伏目に歩みを運ぶ面(かお)には、やつれが見えて何
文字遣い
新字新仮名
初出
「都新聞」1915(大正4)年 4月7日~6月11日
底本
- 大菩薩峠1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1995(平成7)年12月4日