のうのなかのれいじん |
脳の中の麗人 |
冒頭文
奇異(きい)の患者 「ねえ、博士(せんせい)。宮川さんは、いよいよ明日、退院させるのでございますか」 「そうだ、明日退院だ。それがどうかしたというのかね、婦長(ふちょう)」 「あんな状態で、退院させてもいいものでございましょうかしら」 「どうも仕方がないさ。いつまで病院にいても、おなじことだよ。とにかく傷も癒(なお)ったし、元気もついたし、それにあのとおり退院したがって暴(あば)れたりする
文字遣い
新字新仮名
初出
「日の出」1939(昭和14)年8月号
底本
- 海野十三全集 第7巻 地球要塞
- 株式会社三一書房