わたしのていそうかん
私の貞操観

冒頭文

従来は貞操という事を感情ばかりで取扱っていた。「女子がなぜに貞操を尊重するか。」こういう疑問を起さねばならぬほど、昔の女は自己の全生活について細緻(さいち)な反省を下すことを欠いていた。女という者は昔から定められたそういう習慣の下に盲動しておればそれで十分であると諦(あきら)めていた。 けれども今後の女はそうは行かない。感情ばかりで物事を取扱う時代ではなくなった。総(すべ)てに対して「な

文字遣い

新字新仮名

初出

「女子文壇」1911(明治44)年10月~11月

底本

  • 与謝野晶子評論集
  • 岩波書店 岩波文庫
  • 1985(昭和60)年8月16日