だいぼさつとうげ 08 しらねさんのまき |
大菩薩峠 08 白根山の巻 |
冒頭文
一 机竜之助は昨夜、お絹の口から島田虎之助の最期(さいご)を聞いた時に、 「ああ、惜しいことをした」 という一語を、思わず口の端から洩らしました。 そうしてその晩、お絹は夜具を被(かぶ)って寝てしまったのに、竜之助は柱に凭(もた)れて夜を明かしたのであります。 その翌朝、山駕籠(やまかご)に身を揺られて行く机竜之助。庵原(いおはら)から出て少し左へ廻りかげんに山をわけ
文字遣い
新字新仮名
初出
第八巻「白根山の巻」「都新聞」1918(大正7)年 3月7日~5月1日
底本
- 大菩薩峠2
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1995(平成7)年12月4日