へいあんちょうじだいのかんぶんがく
平安朝時代の漢文学

冒頭文

平安朝の前半期には專ら漢文學が行はれ、後半期には國文學が興つたが、此の國文學が興つたのは漢文學の刺激に依るのである。大體日本の文化は支那文化の刺激によつて發達したのであるが、然し文化を生育すべき素質は初めから日本にあつたので、此の點は他の支那に近い邦々と異つて居る。即ち朝鮮には我が假名の如き諺文があるが、少數の歌謠の外、諺文文學といふものが遂に發達しなかつた。これを公に用ふる事になつたのは日清戰爭

文字遣い

旧字旧仮名

初出

史学地理学同攻会夏期講演会講演、1920(大正9)年8月

底本

  • 内藤湖南全集 第九巻
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年4月10日