せっちゅうこう おたるよりくしろまで
雪中行 小樽より釧路まで

冒頭文

(第一信) 岩見沢にて 一月十九日。雪。 僅か三時間許りしか眠らなかつたので、眠いこと話にならぬ。頬を脹らして顔を洗つて居ると、頼んで置いた車夫が橇(そり)を牽(ひ)いて来た。車夫が橇を牽くとは、北海道を知らぬ人には解りツこのない事だ。そこ〳〵に朝飯を済まして橇に乗る。いくら踏反返(ふんぞりかへ)つて見ても、徒歩で歩く人々に見下ろされる。気の毒ながら威張つた甲斐がない。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「小樽日報」1908(明治41)年

底本

  • 日本随筆紀行第一巻 北海道 太古の原野に夢見て
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年6月10日