しっぽうのはしら
七宝の柱

冒頭文

山吹(やまぶき)つつじが盛(さかり)だのに、その日の寒さは、俥(くるま)の上で幾度も外套の袖(そで)をひしひしと引合(ひきあわ)せた。 夏草(なつくさ)やつわものどもが、という芭蕉(ばしょう)の碑が古塚(ふるづか)の上に立って、そのうしろに藤原氏(ふじわらし)三代栄華の時、竜頭(りゅうず)の船を泛(うか)べ、管絃(かんげん)の袖を飜(ひるがえ)し、みめよき女たちが紅(くれない)の袴(はか

文字遣い

新字新仮名

初出

「人間」1917(大正6)年3月

底本

  • 鏡花短編集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1987(昭和62)年9月16日