へいわへのにやく
平和への荷役

冒頭文

——船が嵐にあって沈まないためには積荷が均衡をもって整理されていることが必要である。—— わたしたちのまわりに、また戦争に対する恐怖が渦まきはじめた。一部には、その恐怖が病的にさえ高まってゆきつつある。それだのに、どうしてその戦争に対する恐怖の激しさに相当するだけの、きっぱりした戦争拒否の発言と平和の要望が統一された世論としてあらわれて来ないのだろう。兵火におびえる昔の百姓土民のように、

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人公論」1948(昭和23)年7月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十六巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年6月20日