ちきゅうはまわる
地球はまわる

冒頭文

封建社会のモラルは、日本でもヨーロッパでも、簡単な善と悪とのふたすじにわけられていた。そこでは、君主、家長の絶対権力をより維持しやすくする考え方や行動が善であり、その反対に、支配者の絶対権に何かの不安や疑問をさしはさむことは、最もはなはだしい悪とされていた。鴎外その他の作家の歴史小説には、この消息がまざまざと描かれている。封建時代に、君主にその非行を直言しようと決心した臣下は、いつも切腹を覚悟しな

文字遣い

新字新仮名

初出

「全農林」1950(昭和25)年8月10日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十六巻
  • 新日本出版社
  • 1980(昭和55)年6月20日