ぐとくしんらん
愚禿親鸞

冒頭文

余は真宗の家に生れ、余の母は真宗の信者であるに拘(かかわ)らず、余自身は真宗の信者でもなければ、また真宗について多く知るものでもない。ただ上人(しょうにん)が在世の時自ら愚禿(ぐとく)と称しこの二字に重きを置かれたという話から、余の知る所を以て推すと、愚禿の二字は能(よ)く上人の為人(ひととなり)を表すと共に、真宗の教義を標榜し、兼て宗教その者の本質を示すものではなかろうか。人間には智者もあり、愚

文字遣い

新字新仮名

初出

「宗祖観」大谷学士会発行、1911(明治44)年

底本

  • 西田幾多郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1996(平成8)年10月16日